地獄はここにあります。頭のなか、脳みそのなかに。

『虐殺器官』小説

種の持ち主:アレックス


「地獄はここにあります。

 頭のなか、脳みそのなかに。

 大脳皮質の襞のパターンに。」



いくら目の前の戦いが終わりを告げたとしても、

自分のなかでは終わらないのだろう。


発砲音も、爆発音も、泣き声も、叫び声も。

焼け野原も、バラバラになった身体も、炭も、灰も。

ずっとここに残り続ける。



「目の前の風景は地獄なんかじゃない。

 逃れられますからね。

 目を閉じればそれだけで消えるし、ぼくらはアメリカに帰って普通の生活に戻る。

 だけど、地獄からは逃れられない。

 だって、それはこの頭のなかにあるんですから」



ぼくらは一生、その地獄とともに生きなければいけない。

ぼくらが選んだのは、そんな生き方だ。

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